オーソモレキュラー医学(分子栄養医学)とは?
オーソモレキュラー(orthomolecular)医学は、分子栄養医学とも呼ばれ、最適な量の栄養素の摂取と、身体の構成要素がmolecular(分子)レベルで、ortho(ひずみのない、正しい)となること、つまり分子レベルで整うことを目的としています。

適応疾患
オーソモレキュラー医学はすべての疾患の治療のために必要な身体の基礎となるものです。私が診療してきた分子栄養医学の適応疾患は以下の通りです。
適応疾患
- 原因不明と言われている体調不良、慢性疲労症候群
- 寝起きが悪い、イライラする
- 階段を登ると息切れがするが、年をとったせいだと思っている
- 慢性疼痛(肩こり、腰痛、肩膝の長引く痛み)
- 精神疾患(抑うつ症状、不安が強く同じことを考えてしまう など)
- アレルギー疾患(花粉症 など)
- 小児科領域(発達障害、ADHDなど)

分子栄養医学の特徴と、投薬との違い
不足している栄養素の量が個人で異なる
また、投薬と違い、適切な量が個人によって異なります。人間は人それぞれ顔が違うのと同じで、体が使うエネルギー量、筋肉量、内分泌のバランスなどは、大きく異なるのです。そのため、必要とされる栄養素が大きく異なります。
『サプリメント何取ったらいいかわからない』、『ご飯たくさん食べているから栄養大丈夫じゃないの』と言われることが時々あります。
副作用がほとんどない
まず副作用がほとんどない事が挙げられます。体に必要な栄養素を補充しますので、本来は体にあるべき栄養素です。そのため、副作用がほとんどありません。栄養状態が極めて悪く、消化をする酵素が作れない(酵素のもとはタンパク質ですので、タンパクが十分に摂取できていない人に多くみられます)方は、サプリメントの補充で一時的に胃腸の調子が悪くなることもありますが、適切に栄養素が補充されていくと、解決します。
オーソモレキュラー医学の特徴として、採血により、体が本当に足りてない栄養素を特定して、その栄養素を効果的に補うことにあるのです。不足している栄養素は採血を深く解釈することでわかります。それを食事やサプリメントを用いて補うことを目的としています。
そして、採血をフォローすることで、適切に食事療法やサプリメントで栄養素が身体に補われているかを確かめることができます。つまり個人個人に応じて、オーダーメイドの治療が可能となるわけです。採血の結果が改善するより先に、痛みなどの症状が改善することがほとんどです。
治療の流れ
- ①問診
- まずは、現在の生活習慣、体の不調などについて、問診します。

- ②採血
- 採血を施行します。採血項目は健康診断では調べることがほとんどない項目が含まれています。

- ③治療
- ①②の結果を元に、カウンセリングを行い、食事療法、サプリメントの摂取、生活指導などを行います。

オーソモレキュラー医学との出会い
澁谷真彦は過去6年間1500人以上の分子栄養医学採血を行い、治療をおこなってきた実績があります。
私はもともと循環器内科専門医で、大学病院で10年以上の診療経験があります。診療をする中で、痛みを含めた不定愁訴(なんとなくしんどい、疲れが溜まる、頭痛がする、など)を抱えた患者様の診療にもあたるわけですが、重症ではない軽症の患者さんの場合は、症状にあわせて薬を処方して、経過観察をしていました。
なかなか1人1人にじっくり話を聞いていたら、診療が終わらない、でも本当は患者さんにもっとよりそって、ゆっくり話を聞いて、解決方法を考えたい、とどこかでもどかしく思っていました。
8年前に自費診療で痛みを治療するオクノクリニックに勤務してからは、完全予約制になりましたので、ゆっくり患者さんの話を聞くことができるようになり、とてもやりがいを感じていました。

そして診療をしていく中で、痛みがカテーテル治療(モヤモヤ血管治療)だけでは解決しない、痛みがあるのにモヤモヤ血管がない、もしくはモヤモヤ血管の量にたいして不相応な痛みが出ている方がおられることがわかってきました。そのときにオーソモレキュラー医学に出会ったのです。
そしてオーソモレキュラー医学を勉強、実践するなかで、これは革命的な治療だ、痛みやさまざまな不定愁訴に効果があるかもしれない、と直感的に思いました。その後たくさんの痛みの患者さんにオーソモレキュラー療法を行うことで、患者さんの症状が改善することを経験しています。現在では間違いなく痛みの原因の一部がオーソモレキュラー医学で解決する、ということに確信を持っています。
情報発信
分子栄養医学フォーラム
こちらは2025年に行われた、分子栄養医学フォーラム(栄養療法の学会)で登壇しました。鉄不足がいかに女性の不調と関わっているか、発信活動を続けています。

2025年のペインクリニック誌に寄稿しました。

ペインクリニック誌9月号に、8月号に続いて栄養療法と慢性疼痛について寄稿しました。今回は、特定非営利活動法人オーソモレキュラー分子栄養医学協会の代表理事である金子俊之先生との共著で、オーソモレキュラー栄養療法について詳しく解説しています。
動画でわかるオーソモレキュラー医学
動画では実際に私、澁谷の血液検査の結果をもとに、オーソモレキュラーについてわかりやすく説明しています。ぜひご覧ください。
オーソモレキュラー医学の歴史
オーソモレキュラー医学は、ライナスポーリングが、Science誌に1968年に発表した『Orthomolecular Psychiatry』というタイトルの論文を発表したことが始まりと言われています。Psychiatryというのは精神医学で、さまざまな精神疾患に対して、たとえばナイアシンの大量投与による統合失調の治療など、精神科領域の疾患については今まで多くの報告、実績があります。精神疾患だけではなく、他にも癌、神経疾患、アレルギー疾患、小児科領域であれば、発達障害やADHDなど、幅広い領域で有効性が証明されています。
ライナスポーリング博士は、20世紀における最も重要な科学者の1人として広く認められており、量子力学を化学に応用した実績から、1954年にノーベル化学賞、1962年に核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞を受賞しています。
そして、1962年にScienceに発表された論文がこちらになります。
https://www.science.org/doi/10.1126/science.160.3825.265
この論文の中に、
The functioning of the brain is affected by the molecular concentrations of many substances that are normally present in the brain. The optimum concentrations of these substances for a person may differ greatly from the concentrations provided by his normal diet and genetic machinery.
『ヒトの脳における脳内物質の至適濃度は、日常の食事や遺伝子に制御されている生合成では得られない』
という記載があります。これがオーソモレキュラー医学の起源になっています。
この論文の図になります。

ポーリングは、生物体内のある物質(ビタミンやミネラルなど)の濃度と、その物質の合成に必要な機構の負担との関係を示す曲線を提示しています。
上の図の曲線上に2つのポイントがあります。
1つ目のポイント(左側の点)は、物質の濃度が増加する利点と、合成に必要な機構の負担とが釣り合う最適な濃度点です。2つ目のポイント(右側の点)は、合成に必要な機構の負担を考慮せずに、生物体の特性を最大化する濃度点を示しています。
進化の過程では、生命維持に必須の物質(ビタミン類、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、核酸の前駆体など)の最適濃度が選択されてきました。例えば、ビタミンB6(ピリドキシン)は、高濃度であれば代謝反応が円滑に進み、細胞機能が向上するという利点があります。しかし、その合成には複雑な生合成経路が必要で、多大なエネルギーやリソースを消費します。つまり、ピリドキシン濃度が高ければ細胞機能は向上しますが、その濃度を得るための生合成の負担が大きくなりすぎるのです。
進化の過程では、この「利点」と「負担」が釣り合う適度な濃度レベルが選択されてきたと考えられています。人間は進化の過程で最適なピリドキシン濃度を獲得しましたが、外部からピリドキシンを補給することで細胞機能を最大限に発揮できる可能性があります。
この理論はさまざまな場面で応用できます。例えば、多忙な経営者が特定の栄養素を追加で摂取することで、集中力や持久力を向上させ、業務の効率を上げることができるかもしれません。また、アスリートにとっても、大事な試合や競技会の前に特定の栄養素を積極的に摂取することで、身体のコンディションを最大限に高め、ベストパフォーマンスを発揮する助けになる可能性があります。
このように、ポーリングの理論は、日常生活や特殊な状況下で、人間の潜在能力を最大限に引き出すための一つの方法として役立つのです。
