肩こりが治らない本当の理由は?整体、温め、マッサージは効果があるの?医師が解説
「整体やマッサージに行った日は楽になるけれど、翌日には揉み返しが来て、結局また元の状態に戻ってしまう」「自分で揉んでも良くならない」
そんな経験を繰り返して、このまま一生治らないのではないかと心配されている方は、決して少なくないと思います。多くの方が悩まされている肩こりですが、なぜ一時的にゆるんでも、根本的には改善しないのでしょうか。

目次
肩こりの重症度をチェックしよう
まずはご自身の肩こりの重症度をチェックしてみましょう。
次の項目のうち、当てはまるものにチェックを入れてみてください。
- 肩こりが3か月以上続いている
- マッサージや整体で楽になっても、数日で元に戻る
- 肩こりにより仕事の効率があきらかに落ちている
- 肩こりに伴って、頭痛や吐き気、手の痺れが出ることがある
- 肩甲骨を動かす(腕をぐるぐる回す)動作がスムーズにいかない
- 肩がこる筋肉(僧帽筋)が明らかに腫れて硬くなっている
【判定の目安】
- 0〜2個:軽度の肩こりです。
ストレッチや姿勢の見直しなど、セルフケアでの改善が期待できます。 - 3〜5個:中等度です。
肩こりが慢性化しはじめています。セルフケアに加えて、専門的な対処も検討しましょう。 - 6個以上:重度です。
慢性化した肩こりで、この後ご説明する「モヤモヤ血管」が関わっている可能性があります。
※このチェックはあくまで目安です。腕や手のしびれ・力の入りにくさ、これまでに経験のない急激な痛みを伴う場合は、首の骨や神経の病気が隠れていることもありますので、早めに医療機関を受診してください。
肩こりが治らない原因
肩こりがなかなか治らない方の多くは、複数の原因が重なっています。まずは一般的によく知られている原因について、まとめます。
①長時間の同じ姿勢(デスクワーク・スマートフォン)
成人の頭の重さは約5〜6kgあります。うつむいた姿勢では、首や肩の筋肉にその何倍もの負荷がかかり続けます。パソコンやスマートフォンを長時間使う生活では、筋肉が緊張したまま固まってしまいます。
②運動不足
肩甲骨まわりの筋肉を大きく動かす機会が減ると、筋肉が本来もっている「ポンプ」の働きが弱まります。「ポンプ」の働きが弱ると、静脈灌流が減少し、循環は悪くなることが予想されます。循環が悪くなることが、肩こりに直結するかはわかりませんが、何らか影響があることは予想されます。
③ストレス・自律神経の乱れ
精神的な緊張が続くと、無意識のうちに肩や首の筋肉がこわばります。交感神経の興奮は血管を収縮されます。とくにストレスが強い方は、肩甲骨の内側の凝り症状が強いことがわかっています。
上記の対策をしても治らない方に、ぜひ知っていただきたい原因があります。
④鉄欠乏
意外に見落とされがちなのが栄養、とくに鉄分不足です。鉄分が不足すると、脳内のセロトニン、ノルアドレナリンといわれる脳内伝達物質の合成がうまくいかなくなります。(詳しくは治療の項で解説します)
⑤モヤモヤ血管(異常な血管の増殖)
長引く肩こりの部位には、「モヤモヤ血管」と呼ばれる異常な細い血管が増えていることがあります。
モヤモヤ血管が痛みの発信源になっている肩こりは、マッサージ・温め・湿布といった通常の対処では、根本的には治りません。何をしても戻ってしまう肩こりの、隠れた正体かもしれません。(詳しくはこの後の「肩こりの治療」以降でご説明します)

肩こりの治療
姿勢の改善・運動(セルフケア)
長時間の同じ姿勢を避け、こまめに肩甲骨を動かすストレッチや軽い運動を取り入れる方法です。モニターの高さや椅子など、デスク環境の見直しも含まれます。肩こりの出発点である「筋肉への負荷」そのものを減らす、最も基本的な対策です。

良い点
- 原因である姿勢の負荷を減らせる、根本的な対策になる
- 費用がかからず、今日から始められる
- 血流が改善し、全身の健康にもつながる
悪い点・効果が得られないパターン
- 効果を感じるまでに時間がかかり、続けるのが難しい
- すでに痛みが強い方は、動かすこと自体がつらい場合がある
- 後述する「モヤモヤ血管」がすでにできている場合、姿勢を整えるだけでは痛みが取れないことがある
温熱療法(温める)
ホットパックや入浴、市販の温熱シートなどで患部を温め、血行を促す方法です。
良い点
- 心地よく、自宅で手軽にできる
- 一時的に筋肉がゆるみ、血流が改善する
悪い点・効果が得られないパターン
- 冷めると元に戻りやすく、効果は一時的
- モヤモヤ血管が関わっている肩こりでは、入浴や飲酒で血流が増えると、かえってズキズキと痛むことがあります。「温めても良くならない」は、モヤモヤ血管を疑うサインのひとつです
整体
※正確には治療(医療行為)ではありませんが、広く利用されている対処法ですので取り上げます。
手技によって骨格や筋肉のバランスを整えることを目的とした民間療法です。
良い点
- 施術後に体が軽くなったと感じる方が多い
- リラックス効果が得られる
悪い点・効果が得られないパターン
- 効果が一時的で、数日で元に戻ってしまうことが多い
- 施術者による技術の差が大きい
- 強すぎる施術で「揉み返し」が起きたり、症状が悪化したりすることがある
- 医師の診断を伴わないため、肩こりの陰に別の病気が隠れていても見つけられない
マッサージ
※リラクゼーション目的のマッサージも、正確には治療(医療行為)ではありませんが、こちらも広く利用されているため取り上げます。
硬くなった筋肉を直接もみほぐし、一時的に血行を改善する方法です。
良い点
- 気持ちよく、その場で肩が軽くなる
- リラックスでき、ストレス解消にもなる
悪い点・効果が得られないパターン
- 効果の持続が短く、当日〜数日で元に戻ることが多い
- 揉み返しが起きることがある
- 根本原因(姿勢・栄養・血管)は変わらないため通い続ける必要があり、費用がかさむ
トリガーポイント注射
筋肉の中にできた硬いしこり(トリガーポイント)に局所麻酔薬を注射し、痛みの悪循環を断ち切る治療です。整形外科やペインクリニックで、保険診療として受けられます。
良い点
- 即効性が期待できる
- 保険適用のため、費用の負担が少ない
悪い点・効果が得られないパターン
- 効果が数日〜数週間で切れてしまい、繰り返し注射が必要になることが多い
- 注射部位の痛みや内出血が起こることがある
- 痛みの原因が「筋肉のしこり」ではなく、モヤモヤ血管や栄養状態にある場合には、効果が出にくい
栄養療法
血液検査で体の栄養状態を詳しく調べ、不足している栄養素を食事の見直しやサプリメントで補っていく治療法です。
特に注目していただきたいのが「鉄」です。鉄は血液の材料になるだけでなく、筋肉に酸素を蓄えたり、細胞がエネルギーを作ったり、神経の働きを整えたりするためにも欠かせません。
健康診断で「貧血」と言われていなくても、体の貯蔵鉄(フェリチン)が減っている“かくれ鉄不足”の方は少なくなく、筋肉の疲労が回復しにくい、痛みを感じやすい状態になっていることがあります。実際、当院で慢性的な痛みにお悩みの患者様の血液検査を行うと、こうした鉄不足が高い頻度で見つかります。
良い点
- 「疲れやすい」「眠りが浅い」「気分が沈みがち」といった、肩こり以外の不調にも同時にアプローチできる
- 体の内側から「痛みにくく、回復しやすい体」をつくる根本的な方法
- 注射や施術が苦手な方でも取り組みやすい
悪い点・効果が得られないパターン
- 効果を実感するまでに数か月単位の時間がかかる
- 栄養状態に大きな問題がない方には、効果が限られる
- 詳しい血液検査やサプリメントは保険がきかない場合があり、費用がかかる
モヤモヤ血管の治療(動注治療)
痛みのある場所には「異常な血管」が増えていることがあります。その血管に注目した、肩こりの治療法があります。
近年、医学の世界で注目されているのが、痛みのある場所には「本来そこにあるはずのない、細い血管」が増えているという事実です。
血管は通常、その組織が必要とする分だけ作られています。ところが、長時間のデスクワークなどで首や肩の筋肉が酸素不足の状態が続くと、体はそれを補おうとして、糸くずのように細い血管を次々と作り出します。私たちはこれを「モヤモヤ血管」と呼んでいます。

僧帽筋(肩)のモヤモヤ血管の造影画像
このモヤモヤ血管は、血流を増やそうとする一方で、周囲の神経も一緒に引き連れてきてしまいます。その結果、本来であれば感じないはずの刺激にまで神経が過敏に反応するようになり、「揉んでも温めても治らない、重く張ったような痛み」として感じられるようになるのです。
実際に、このモヤモヤ血管を減らす治療を行うと、何年も続いた肩こりが改善するケースを数多く経験しています。
当院で行っているのが、異常に増えた血管を標的にした治療である動注治療です。
マッサージのように外から筋肉をほぐすのではなく、痛みの発信源となっている血管そのものに、体の内側からアプローチする点が、これまでの対処法との大きな違いです。
治療の詳しいメカニズムと、その効果を確かめた臨床研究については、次の章でご説明します。
良い点
- 即効性が期待できる:痛みの発信源である血管に直接アプローチするため、治療後早い段階で肩の軽さを実感される方が多くいらっしゃいます
- 効果が長持ちしやすい:臨床研究では、治療後6か月の時点でも痛みの改善が維持されていました。「その場しのぎ」ではない点が、対症療法との大きな違いです
- 体への負担が少ない:注射をするだけの5分でできる治療です。
悪い点・効果が得られないパターン
- 自由診療(保険外診療)のため、保険の治療に比べて費用がかかります(費用の詳細は料金ページをご参照ください)
- モヤモヤ血管が関与していない肩こり(姿勢や筋力、ストレス、栄養状態が主な原因のもの)には、十分な効果が得られないことがあります。そのため当院では、治療前の診察で「モヤモヤ血管が関わっているタイプの肩こりかどうか」を見極めることを大切にしています
- 治療後、一時的にだるさや鈍い痛み、注射部位の内出血などが出ることがありますが、多くは数時間で自然におさまります
- 効果には個人差があります
モヤモヤ血管の治療(動注治療)で肩こりが改善するメカニズム
私はもともと、心臓カテーテル治療を専門とする循環器内科医として15年間、心臓や血管の治療にあたってきました。その後、慢性的な痛みの治療に専門を移し、研究を重ねる中で一つの確信に至りました。肩こりの本当の原因は「筋肉そのものの疲労」ではなく、「血管」にあるということです。
2021年、僧帽筋の痛みに関する臨床研究を発表しました
このモヤモヤ血管に対する治療の効果を確かめるため、私たちは2021年に、肩こり(僧帽筋の慢性的な痛み)に関する臨床研究の結果を、英文の医学誌『Cardiovascular and Interventional Radiology』に発表しました(Shibuya M, et al. 2021;44(1):102-109.)。
対象となったのは、6か月以上にわたって僧帽筋の痛みが続き、湿布や内服薬、リハビリといった一般的な治療では改善しなかった42名の患者様です。肩の筋肉に栄養を送る「頸横動脈(けいおうどうみゃく)」「肩甲上動脈」「肩甲回旋動脈」のうち、痛みの部位に応じてモヤモヤ血管が枝分かれしている血管を特定し、カテーテルを使って異常な血管だけを一時的に詰める「動脈塞栓術」を行いました。
その結果、治療前は10点満点(最も痛みが強い状態を10とする評価)で平均8.6点だった痛みの強さが、治療後1か月で5.1点、3か月で4.1点、6か月後には3.9点まで、統計学的にも明確な差をもって改善しました。6か月後の時点で「臨床的に改善した」と判定された方の割合は71.4%にのぼり、治療に関連する重大な合併症は認められませんでした。
従来の対症療法では、「一旦良くなってもすぐに元に戻る」というケースが多く見られました。血管という根本原因にアプローチすることで、痛みの強さが半分以下まで下がり、それが半年後も維持されるという結果は、私たちにとっても大きな手応えとなりました。
カテーテル治療が体に起こしていること
動脈塞栓術というと、血管を「詰める」という言葉の響きから、何かを壊してしまうのではと心配される方もいらっしゃいます。
実際に行っているのは、ごく細い、本来は不要なモヤモヤ血管にだけ、一時的に吸収される微粒子を流し込み、血流を整える処置です。正常な血管や筋肉そのものへの血流は保たれます。
異常な血管への過剰な血流が落ち着くと、一緒に引き連れられてきていた神経への刺激も収まっていきます。これは、こわばった筋肉を外から「ほぐす」のではなく、痛みを発信し続けている回路そのものを静め、組織が自然な状態に戻っていくのを後押しする治療です。
まとめ
肩こりは、体だけでなく生活全体に影響します。
先にご紹介した研究で用いた痛みの評価方法には、痛みの強さだけでなく、睡眠の質や日々の気分、人との関わり、仕事への影響といった項目も含まれています。それは、肩こりが単なる「筋肉の張り」ではなく、生活全体に影を落とす存在だからです。
長く肩こりと付き合ってきた方で、当院の治療を受けた方の多くが、「痛みが軽くなったら、夜よく眠れるようになった」「気分が前向きになった」と話してくださいます。肩こりを治療するということは、痛みを取るだけでなく、その方の生活の質そのものを取り戻すことです。
もちろん、肩こりの原因は血管だけに限りません。姿勢や栄養状態など、複数の要因が重なっていることがほとんどです。ただ、これまで「揉んでも、温めても、なぜか戻ってしまう」という方にとって、血管という視点は、見過ごされてきた根本原因の一つになり得ると考えています。
当院では、こうした血管へのアプローチを含めた、痛みの根本原因を探る診療を行っております。整体院やマッサージに行っても、整形外科に行っても治らない肩こりでお悩みの方は、ぜひ一度、当院にご相談ください。
著者プロフィール

- 院長
-
オクノクリニック神戸三宮院、宮崎治療院院長。循環機器内科専門医。
医学部卒業後、循環器内科医として心臓血管カテーテル治療に従事。2012年11月~2014年10月アメリカSkirball Center for Innovation (ニューヨーク州、血管内治療デバイス研究施設)に研究留学。2016年3月大学院博士課程修了 研究テーマ「冠動脈ステント留置後の病理組織と光干渉断層法の画像の比較について」。
最新の投稿
2026年7月20日肩こりが治らない本当の理由は?整体、温め、マッサージは効果があるの?医師が解説
